※本稿は2026年9月18日時点の公開資料に基づく。

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■先に結論
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今回のnoteは非常に長いので最初に結論
Simple is Bestとは
・自分たちでマネジメントできるプロジェクトであること
・そのために(他者依存せず)自分たちで作っていくこと
・「誰とやるか」決めて、柔軟に変更できるようにすること
※難しい時代の中で手法に溺れ、誰かに依存して、複雑でガチガチの仕組みにしてしまっているのは自分たち≒自縄自縛(自縄自爆)

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■静岡市海洋文化施設の契約解除
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●報道及び客観的な経緯等

2026年9月15日、静岡市議会は(仮称)静岡市海洋・地球総合ミュージアム整備運営事業(PFI法に基づくPFI)の契約を合意解除するための和解議案を全会一致で可決した。
静岡市とSPCである株式会社静岡海洋文化ネットワークは既に9月9日、これまでに実施した設計・建設業務の出来形に対する清算として、市が182,116千円を支払うことで合意解除する仮契約を締結していたが今回、議決により、その合意が正式なものとなった。
この事業は、2023年2月に事業契約が締結された。契約金額は消費税等を含め16,960百万円、BTO方式で設計・建設を3年間、維持管理・運営を15年間行う計画であったが、当初約9,380百万円とされた建設費は2026年3月時点で約16,195百万円にまで増加した(増加額は約6,815百万円)。
市は追加負担可能上限額として約3,245百万円を提示したが、残る約3,570百万円を「契約に基づき」SPCが負担する前提では事業継続が不可能との回答が民間事業者からなされ、市も継続できないと判断した。

●静岡市の公表資料
特に2026年3月31日の臨時記者会見で用いられた資料には、契約の内容や経緯が丁寧に書かれている。

●建設資材の高騰「だけ」なのか?
今回の契約解除の主要因として、建設資材や設備機器の価格高騰が大きな要因であったことは間違いない。市の資料でも、実勢価格が契約上の改定指標を大幅に上回り、3年間で50%を超えるような物価高騰となったことが示されている。
市や事業者だけで制御できない外部環境の変化があったことは冷静に認める必要があるし、全国で公共事業を中心に多くのプロジェクトが頓挫していることからも、物価高騰(・人件費高騰や人がいない問題)は現在の大きな課題である。
しかし、物価高騰だけを原因として片づけてしまえば、同じことはまた起きる。本事業から本当に考えるべきこと・学ぶべきことは、変化の大きな時代に、なぜ事業を小さくしたり、内容を組み替えたり、役割や負担を見直したりできなかったのかである。外部環境が変わること自体は防げないし、物価・人件費の高騰や社会経済情勢が激変していることは、ここ10年の日本・世界を見れば誰の目からも明らかである。
問題なのは、このように「前提条件」が変わったときに動けない仕組み・スキーム等を、行政が自らつくってしまったことである。

●182百万で済めば安いのか?
契約解除によって支払われる182,116千円は、設計・建設業務の出来形に対する清算額である。この金額だけを見て、今回の損失の大小を評価することはできないし本質的ではないが、事業化の検討、基本構想・基本計画・可能性調査・アドバイザリー業務等に要したコンサルフィー、事業者選定・契約締結・設計・関係者協議に費やした行政と民間の時間は、今回の議決対象となった清算額には含まれていない。
予定していた公共サービスが実現しなかったことや、清水港周辺で別の事業を展開できた可能性等の機会損失の費用も、同様にこの182百万円には計上されていない。これらを根拠なく金額換算することはできないが、契約上の支払いだけが事業中止のコストではないことは明らかであり、実際に静岡市が「まち」として負ったコストはこの数字より遥かに大きい。
公共事業では、契約を締結した時点をゴールと捉えやすい。議会の議決を得て事業者が決まり、工程表ができると、事業は実現へ向かっているように見える。
実際に、今回の案件もそうだが「なぜか」公募時点で詳細な仕様発注に限りなく近い「分厚い要求水準書」や本来は行政と優先交渉権者が性能発注で示されたことを一つずつ共通認識を醸成しながら作っていくはずの「契約書(案)」まで示されてしまっているのだから、契約≒ゴールの錯覚を持ってしまうのもわからなくない。
しかし、本当のマネジメント・プロジェクトは契約後に始まる(更に言えば今回のプロジェクトも「サービス購入型」なので、その施設がオープンしてからが勝負である)。
物価、需要、技術、関係者の事情が変わる中で、目的を守りながら規模・仕様・負担・工程を調整し続ける必要がある。更に言えばオープンしてからも社会経済情勢や経営状況を見ながら柔軟にサービス内容等を見直していくことが「経営」として当たり前のことである。
どれだけ要求水準書や契約書(案)で書いてあろうが、契約締結までを丁寧に進めようが、契約後の変更を扱う仕組みが弱ければ、長期のプロジェクトは完遂できない。それどころか、「やってもいない段階」で事細かにあらゆることが規定されていることが仇になってしまう。

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■複雑さを重ねた事業構造
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●かなり特殊なもの?

静岡市自身が2026年3月31日の前述の資料で、この事業構造を「かなり特殊なもの」と整理している。
ベースとなっているPFI法に基づくPFI(BTO方式+ほぼサービス購入型)そのものは王道だが、官民のリスク分担・差引きサービス型・東海大学との関係・プロフィットシェアとロスシェア等が要求水準書や契約書案で明確・詳細に定義されてスタートしたことが今回の事業の特殊性であろう。

●差引きサービス型
筆者も初耳の言葉であったが、当初は「混合型」を指すのだと思っていたが、実際には
「差引きサービス型」
・建設コストと資金調達コストを市が負担するが。。。
・運営コストの一部を入館料収入等で賄う
・運営コストから収入を差し引いた部分が市の負担額となる
ものである。
本事業では運営コスト約14,880百万円/15年、入館料収入等が約7,300百万円/15年なので、市が支払う運営費は約7,580百万円/15年となっている。
つまり、運営収入が増加しても、(後述のプロフィットシェアによって民間事業者にも一部の利益が還元されるが、)建設費の増加を吸収する・運営段階で挽回する構造には、もともとなっていない。

●プロフィットシェア・ロスシェア
PPP/PFIの世界でのプロフィットシェア・ロスシェアは、愛知県の有料道路において料金収入予測の±6%を民間のインセンティブ・リスクとした事例が有名であり、上記のように水の官民連携(ウォーターPPP)においてもプロフィットシェアが記されている。
(最近、国交省やコンサル・監査法人が非常に好きな仕組みで)考え方そのものは経営にとって大切なものであるが、愛知県の有料道路のようにインセンティブとリスクはイコールフッティングしていることが大前提である。
今回の静岡市の事業においても、入館料収入にプロフィットシェア・ロスシェアが設定されていた。
提案収入に対する増減が10%以内であればSPCが負担または取得するが、10%を超え40%以下の部分は市とSPCで50%ずつ分ける。40%を超える増収部分は市20%、SPC80%で分け、40%を超える減収部分はSPCが100%負担する。収入を増やしてもSPCが全額を建設費増加分に回せず、反対に大幅な減収リスクはSPCに残る仕組みである。
なぜかインセンティブとリスクの構造が一致していない。。。
そして、今回のように物価高騰に要するイニシャルコストを「運営で頑張って取り返して回収する」ことがそもそもできない構図になっている。

===続きはリンク「まちみらい公式note」===
https://note.com/machimirai/n/n6a8ffbef7008

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