■■はじめに:予見されていた危機■■
●「10年後には自治体回らず」の記事
2025年12月27日、朝日新聞がYahoo!ニュースに配信した記事が目に飛び込んできた。
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政府は、人手不足で市町村が担いきれない自治体業務を都道府県が担うなど、市町村事務の再編・統合に向けた検討に入る。2026年1月にも政府の地方制度調査会で議論を始める方向だ。住民に身近な自治体へ事務や権限を移してきた地方分権改革が、人口減少などの社会変化で転換を強いられつつある。
政府は1999年の地方分権一括法成立以降、住民の意思をより反映した行政が主体的に行われるよう、国から都道府県へ、都道府県から市町村へと財源や権限の移譲を進めてきた。だが近年、地方の市町村では技術職などを中心に公務員のなり手が不足。事務処理に支障が生じかねない状態になっている。総務省幹部は「地方分権は転換点に来た。放置すれば、10年後には自治体業務が回らなくなる。いま手を打たなければならない」と危機感を話す。
同省は9月に、全都道府県の担当者が参加する会議を開催。対応策として、市町村の事務を都道府県に移す▽近隣の市町村が広域で連携し対応する▽デジタル化を進めるといった例を示し、都道府県が中心になって市町村と協議し、今後の業務の分担のあり方を模索するよう促した。 政府は、来年1月から必要な制度設計について地方制度調査会で議論を本格化させる。
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政府は2026年1月にも地方制度調査会で議論を始める方向だという。記事には総務省幹部のコメントとして「地方分権は転換点に来た。放置すれば、10年後には自治体業務が回らなくなる。いま手を打たなければならない」と危機感が記されている。
●わかっていたはず
この記事を読んだ瞬間、正直に言えば「何を今さら」という感情が先に立った。こうなることは「とっくの昔」にわかっていたことだ。
総務省は2018年に「自治体戦略2040構想研究会」を立ち上げ、「2040年頃には経営資源が大きく制約されることを前提に、今の半数の公務員で行政を支える必要がある」と警鐘を鳴らしていた。
「労働力(特に若年労働力)の絶対量が不足」「人口縮減時代のパラダイムへの転換が必要」──これが大前提だ。そのうえで、上記のとおり「半分の人数で自治体が経営できること」だけでなく、「AI・ロボティクスによる自動処理」「自治体の情報システムや申請様式の標準化・共通化」が求められると提言している。
団塊ジュニア世代が65歳以上となる一方、その頃に20歳代前半となる者の数は団塊ジュニア世代の半分程度にとどまる(団塊ジュニア世代の出生数:2,001〜2,092千人、2017年出生数:950千人)という試算も既に公表されていた。平成の大合併も地方創生も、そのような文脈の中で進められてきたはずだし、それが起点になっていたはずだ。
更に注目すべきは「公共私によるくらしの維持」という視点だ。報告書は、人口減少と高齢化により公共私それぞれのくらしを支える機能が低下するなかで、自治体は新しい公共私相互間の協力関係を構築する「プラットフォーム・ビルダー」へ転換する必要があると指摘している。自治体は(全てのものを自ら直営で全て提供する「サービス・プロバイダー」ではなく、その司令塔・マネジメントを担う「プラットフォーム・ビルダー」であるべきだとも記されている。これは、筆者が主張している「コアコンピタンス経営」と完全に軌を一にする。
また、「個々の市町村が行政のフルセット主義から脱却し、圏域単位での行政をスタンダードに」「都道府県・市町村の二層制を柔軟化し、それぞれの地域に応じ、都道府県と市町村の機能を結集した行政の共通基盤の構築が必要」とも提言されている。
●7年前の話なのに。。。
総務省の担当者は当時、筆者が所属していた日本PFI・PPP協会にこの件でヒアリングに訪れてきたので「このような将来が想像されるなら、今からできることを着実に進めることが大事で、その一環としてPPP/PFIによって自分たちだけでは対応できない部分を補完していくことが重要だ」と話した(が、正直あまりピンときていないようであった)。
これらの提言が出されたのは2018年のことだ。それから7年が経過した今、どれだけ実行されただろうか。
にも関わらず、なぜ今になって「10年後には自治体回らず」という言葉が大見出しになるのか。
●抜本的な改革ではなく画一的な「丸投げ・喰われる自治体」
答えは単純だ。この10年以上、本質的な改革がほとんど行われてこなかったからである。
平成の大合併も本来はこうした文脈を意識してのものであったはずだが、結局は「特別交付税措置」「合併特例債目当て」でしかなかった。
どんなまちへ再編していくのかといった基本的なことは置き去りにされたまま、(従前の施設を解体することもなく、)まちの規模からスケールアウトした庁舎・図書館・ホール等を整備してしてきたし、働き方も従前のままだったり、議員の数の見直しすら進んでいない自治体が多い。
更に言えば、平成の大合併から20年程度経過しているにも関わらず「元〇〇町の・・・」の論理や壁を聞くことがいまだに多い。
(自称)公共施設マネジメントの先進自治体とされるさいたま市であっても、最近になってやっと動き始めたようだが、いまだに合併に伴う公共施設の使用料・利用料の見直しすらできていない。
また、まち・ひと・しごとの地方創生の計画についてもコンサル・監査法人等が自治体の計画策定を「丸ごと受託」(≒行政は「丸投げ委託」)することで、それぞれの自治体ごとに「どんな生き方をしていくのか」考える機会すら放棄し、喰われる自治体に成り下がってしまった。
「自分たちのことを自分たちで考えようとしない」自治体と、そうした自治体を喰い物にするコンサル、更にはお金を撒いて策定を指示したのだから後は自治体の判断とする安易な総務省、悪い意味でのWin-Win-Winの構図が成立してしまっている。
これは地方創生に限らず、自治体を取り巻く根幹的で共通した課題である。
総務省の「地域力創造に関する施策説明会資料」では
・人口減少がもたらす影響・課題に対する認識が十分に浸透しなかったのではないか。
・人口減少を前提とした、地域の担い手の育成・確保や労働生産性の向上、生活基盤の確保などへの対応が不十分だったのではないか。
・産官学金労言の「意見を聞く」にとどまり、「議論」に至らず、好事例が普遍化されないなど、地方自らが主体的に考え行動する姿勢や、ステークホルダーが一体となった取組、国の制度面での後押しが不十分だったのではないか
等が当たり前のように記されているし、当事者意識がなくデジタル田園都市関連の交付金まで含めて国費だけで60兆円も投下しながら、どこか他人事のような記載にとどまっている。
更に「当面は人口・生産年齢人口が減少するという事態を正面から受け止めた上で、人口規模が縮小しても経済成長し、社会を機能させる適応策を講じていく」としているが、これこそが地方創生で目指すところだったはずではないか。
===続きはリンク「まちみらい公式note」===
https://note.com/machimirai/n/nf2ea6a215a2c?app_launch=false

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