●なんで市営住宅あまり取り上げないの?
知り合いから「なんで市営住宅の事例を書籍・note・セミナー等であんまり取り上げないの?」と素朴な疑問を投げかけられた。
確かに言われてみれば(後述する)大東市morineki、ひたちなか市民間賃貸住宅の活用、宮崎市入居者移転支援業務・目的外使用、常総市良品計画と連携したコミュニティ醸成等、流山市_提案制度による入退去を含めた業務アウトソーシングぐらいしかスライドはなさそうで、このなかでもヘビーユースしているものはmorinekiと宮崎市の事例ぐらいである。
自分で手がけたり直接サポートした事例が少なかったことも理由としてありそうだし、それほど自分から興味を持って調べたり突っ込んでいくこともなかったこともありそうだ。
一方で、考えてみれば各地のアドバイザー業務において、施設所管課から市営住宅が案件として上がってくることは多いが、そのほとんどが「長寿命化計画に基づき(少しだけ住戸数を減らしながら)PFI法に基づくPFIで建て替えたい」というもので、宮崎市を除いてクリエイティブなプロジェクトに昇華できたものは多くない(というか、皆無と言っても過言ではない)。
日本全体の公営住宅は2021年度末で2,133千戸で、UR都市機構の住宅の約3倍にも及んでいる。本noteでは詳細を割愛するが、改良住宅も137千戸存在している。
建設年度をみると、1966〜1985年度に建設されたストックの割合が全体の53.9%となっており、公営住宅の老朽化が日本全体として進んでいることがわかる。
近年の公営住宅の供給実績を見てみると、急激に公営住宅の供給実績は減少しており、2021年度には「新規」の公営住宅の供給戸数はわずか385戸で、ほぼ全てが既存の改築となっている。データとしてはネット上で確認できなかったが、業界新聞や実際に何らかの形で関わった案件をベースにした体感では、ほとんどが現地建替(でほぼ同等や多少間引いた程度の戸数)を選択しているだろう。
つまり地方自治体が保有する公営住宅は、その多くが戦後復興期や高度成長期に整備されたものである。当初は住宅政策として住む場所を物理的に「供給」することを目的としてきたが、バブルの頂点以降はその目的・立法事実が喪失して供給戸数が減少していった(≒新規整備のための立法事実も喪失していった)と推測される。上記グラフの1993年からしばらくの間、供給戸数が非常に多かったのは阪神・淡路大震災、2013年度以降の増加は東日本大震災による復興住宅として整備されたものであろう。


■公営住宅を巡るモヤモヤ感
●セーフティーネット⇒移住・定住促進で増加するストック
近年ではセーフティーネットとしての公営住宅だけでなく、国の地方創生による「表面的な人口の奪い合い」の道具として移住・定住を目的に(公営住宅法に基づかないものも含めて)公営住宅が整備・利用されることも多い。
国土交通省も移住・定住促進住宅を促す方針・政策を打ち出したこともあり、急速な人口減少が続き、かつ日本全体の空き家率が2023年度で約9,000千戸(13.8%)になっているにも関わらず、日本全体の総住宅数は(近年、割合が鈍化してきたとはいえ)右肩上がりに増加し、2023年度には65,020千戸にもなっている。
これらのことからわかるのは、日本全体として「住宅の総ストックにはかなりの余剰が発生」していて、絶対数としての需要は低下しているにも関わらず、「急減している人口のパイを右から左に動かすだけ」の絶対数としての住宅供給が行われていることである。
これは「子ども医療費や給食無償化、ふるさと納税に依存した過剰な定住・移住政策、あらゆる税金を全て減免&報奨金による企業誘致」と同様のチキンレースでしかなく、その程度の「表層的なニンジン」に群がるような人々・企業は、より大きなニンジンをぶら下げられた瞬間にそのまちから消えていく。
(とはいっても、現実的には理想論・理論だけ掲げてこうしたチキンレースに参加しないと「負け組」一直線になるジレンマも存在するorz)
公営住宅の原点は「セーフティーネット」だったのだから、改めて「原点回帰」することが重要なのではないか。
総務省を中心とした公共施設等総合管理計画≒ザ・公共施設マネジメントも、当初は(本来は全く意味が違うが、なぜか短絡的に)公共施設・インフラを負債とみなし、ハコモノ3原則のさいたま市を猛プッシュしたり、除却債に象徴されるように「総量縮減」を大命題に掲げていたはずだ。しかし、世の中の流行りに表面的に乗ったのか、ハコモノ面積を減らすことが難しいことが今更わかったからなのか、近年の公共施設等適正管理推進事業債ではユニバーサルデザインがメニューとして登場していることのカオス感と似ている。

==続きはリンク「まちみらい公式note」==
https://note.com/machimirai/n/nbf35e0b22960

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