■「書かない市役所」が“書けない市役所”になる日
●北見市の「財政破綻のおそれ」ニュース
北見市が「財政破綻寸前の状態にある」という報道があちこちでされている。ワイドショー等では「ゴミ袋の値段が1.5倍に上がること・第二の夕張になるのでは?」の部分がフォーカスされているが、本質はそこではない。
(夕張市のケースはここでは詳しく述べないが、エネルギー政策のシフトによる急激なまちの構造の変化、炭鉱から観光へのシフトチェンジの失敗などと合わせて、「ジャンプ方式」に手を染めてしまった(染めなければならない環境に陥ってしまった)ことが致命傷であった。)

●財政非常事態宣言
数年前までは毎年いくつか自治体が財政非常事態宣言をするのが一般的だったが、コロナ禍以降は「なぜか」地方公共団体の一般会計の規模やその歳入歳出構造は改善していることが多く、このようなニュースを見かけることは少なくなった。
財政非常事態宣言をした自治体は、地方自治法・地方財政法に根拠が置かれているわけでもなく、国からプロセスが示されているわけでもないが、「財政再建計画」を策定して公表することが一般的になっている。

●北見市の概要
北見市では財政非常事態宣言は行なっていないものの、今後3,200〜3,360百万円/年の収支不足が発生することが明らかとなり、2025年度当初予算の編成作業が遅延し、3月議会の開会を1週間延期する事態に陥った。
市のホームページでは財政健全化に向けた財政再建計画が公開されているが、その内容を読むと強烈な違和感を覚える。前半に「人口減少、少子・高齢化、物価・人件費の高騰等の社会経済情勢の困難さを示し、ふるさと納税等を頑張ってきたが合併に伴う地方交付税の特例措置の縮小もあって全く間に合わない。。。」といった対外的な要因・他人事の視点ばかりが挙げられている。
また、この財政再建計画における財政再建のための対応策として、合併特例債に依存して華美・巨大なスケールで整備し財政悪化の主要因の一つ・象徴ともなっている(ワイドショーでは切り取り報道の部分もあるが、集中的に取り上げている)新庁舎についてはほとんど触れられていない。

●合併特例債に依存した新庁舎
北見市は2021年、合併特例債を活用し総事業費11,800百万円をかけて新庁舎を建設した。合併により分散していた機能を集約し、市民サービスの向上を図ることを掲げていたが、皮肉なことにその庁舎が市の財政を強く圧迫している。
他の事務事業に無理をかけバランスを欠いたイニシャルコストだけでなく、合併特例債の地方負担分の償還、維持管理費を含めれば、それ以上の固定費が今後発生してくる。また、これらの償還金・維持管理費は将来にわたって「固定費」として財政状況に影響を与え続けていく。
にもかかわらず、財政再建計画で新庁舎についての記載は文末に添えられた「継続して検討を進めるもの」の項目に、効果額・手法・時期等も全く存在しない「開庁時間の見直しを検討する」の一行のみである。これも市民サービスを低下させるだけでしかなく、「書かない窓口」や「まちの交流やにぎわいに寄与する」を謳い文句にしていた当初のビジョンと全く合致しない。
そもそも雪国で温熱環境が厳しいのに「開かれた庁舎として1階・2階はガラスカーテンウォールを採用し、開放性を高め、中心市街地とにぎやかさが連続する明るくオープンな空間を創出しています。」とすること自体、経営感覚が表れている。
市民にはゴミ袋の値上げ(1.5倍)、各種イベントの中止、公共施設の統廃合といった“痛み”が課されている中で、自分たちの「お城」や労働環境については(若干の給与見直し程度で)何ら痛みを伴う見直しをしようとしないのでは、市民の理解も得られないだろう。
北見市役所は「書かない市役所」として全国から注目されているようだが、このままでは「書く余力すらない市役所」になりかねない。現状と真摯に向き合わないまちの未来は暗い。その意味で、今北見市が直面しているのは、単なる財政問題ではなく、まちのガバナンスそのものである。

===続きはまちみらい公式note===

https://note.com/machimirai/n/n3bd6e0b5ec4f

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