●包括施設管理業務とは
包括施設管理業務とは、「庁舎の電気工作物・学校の浄化槽設備等の各種保守点検業務をまとめて発注」するものである。行政の予算は勘項目(大項目・中項目・小項目)に区分され、地方財政法では事業別予算が原理原則とされているので、本来は予算の費目ごとに個別の予算編成をすることが求められている(庁舎・学校・消防などはそれぞれ別の費目が設定されているので、これを一つに扱うことは「原則として良しとされない)。
当然にまとめて発注することで「契約本数を圧倒的に削減でき、契約や支払い等の手続きを集約することで事務の効率化」を図ることができる。また、行政の施設管理担当者はビルメンテナンスのノウハウ・スキルが高いわけではない(万が一、ビルメンテナンス業者と同等以上のスキルを有しているのであれば、公務員をやっているのは勿体無い)ので、民間事業者の持ってきた仕様書をベースに発注したりしてしまう。その結果、管理の質にバラツキが生じたり落札額が高止まりするといった問題が生じ、建築物としての物理的な劣化も早めてしまったり、当たり前の環境が確保できなくなってしまっている。この部分をビルメンテナンスの専門業者に包括委託することで、管理の質の向上・当たり前の環境の確保にも繋がっていく。
また近年では指定金融機関から振込手数料の値上げを要請される事例も多く聞くが、こうした面でも支払い伝票の数を激減させることは公共施設関連のコスト削減にも直結する。(後述する射水市では包括施設管理業務によって支払伝票を一本化するメリットを感じ、現在では光熱水費の伝票も集約して更なる効率化を図るとともに、水道料金の見直しなどにも着手している。)
何よりも、公務員は「ビルメンテナンスをするためにいるのではなく、そのまちの未来を考え首長の補助機関として実行していく」唯一の存在なので、ビルメンテナンスをしている場合ではない。過剰なコンプライアンスや5時に帰ることをベースとしたなんちゃって働き方改革・ワークライフバランスが行政内部に充満しているなかで、未来を考え実行していくための時間を確保するためには、包括施設管理業務は自ずと必要なものになってくるはずだ。
包括施設管理業務を実施していくためには(包括に限った話ではないが)、拙著「PPP/PFIに取り組むときに最初に読む本」でも記しているとおり「何のためにやるのか」を明確にして実施する必要があるが、包括から得られるメリットは多岐に及ぶことは先行事例を見ていけば間違いない。


●能登地震における射水市の対応
北陸地方で能登地震発生時に唯一、包括施設管理業務を実施していた射水市では、受託者である日本管財株式会社が延べ60名/18日のスタッフを動員して、公共施設の点検や応急措置を迅速に行なったことにより、市内の小中学校も3学期を通常どおりに再開することが可能となった。
当時は、「ボランティアすら北陸地方に来ないでください」とされていた時代にこのような対応が取れたのは、射水市が包括施設管理業務の「契約」をしていたことと「受託者である日本管財が射水市の公共施設の状況を熟知していたこと」が大きく影響している。
まちとしての総力戦が求められている現在、包括施設管理業務はこのように「いざというとき」にも大きな力を発揮するポテンシャルを秘めている。

●そもそも包括の原点とは
世の中ではありがたいことに筆者が「包括施設管理業務の生みの親」であると認識されているようだが、これは大きな間違いである。確かに公募型の包括施設管理業務を流山市がはじめて実施したことは事実である。
しかし、筆者が考案したものではなく当時、様々な場面で交流のあった大成建設のPPP/PFI担当者からこのスキームの提案を受けたことがきっかけになっている。小さなハードルが多く存在するなかでどうやったら事業化できるかを徹底的に議論しながら整理していったものが流山市における包括施設管理業務(包括のプロトタイプ、Ver1.0)の原点となった。
最近になって知ったことだが、この大成建設の担当者は、包括そのものをビジネスモデルのゴールとして位置付けることを意図していなかったとのことである。
包括を第一歩として、将来的にはサンディスプリングス市のように最小限の職員数で行政はコアコンピタンス経営に徹しながら多様な民間事業者と連携しながらまちを経営していく、そうした自治体経営のモデルを作っていきたい。ただ、いきなり自治体にそうした形を提案してもリアリティがないので、まずは簡単かつ合理的にアウトソーシング(←短絡的な行政的アウトソーシングとは異なる)できる部分としてハコモノ関連の包括施設管理業務を思いついたとのことである。
こうした視点で見れば、「包括ごとき」ができないようでは本格的なPPP/PFIやまちとリンクした自治体経営には遠く及ばないことも見えてくる。

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続きはリンク「まちみらい公式note」
https://note.com/machimirai/n/ne9f52be90775

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