●PPP/PFIの優先的検討規程がヤバい

多くの自治体が公共施設等総合管理計画において、今後の方針として「綺麗な文字列」としてPPP/PFIの推進を掲げ、企画段階でPPP/PFIの導入を検討するためにPPP/PFIの優先的検討規程を整備しているが、国のモデルを劣化コピーしたものがほとんどであり、実態としても優先的検討規程をベースにした優れたプロジェクトが出てきていない。
PPP/PFIの優先的検討規程、そして自治体の本気度は大丈夫なのだろうか。

・PPP/PFIの優先的検討規程とは

2015年に地方自治法に基づく「要請」という強い形で、人口20万人以上の自治体に策定が要請されたことは大きな出来事であった。もちろん、前年の公共施設等総合管理計画の策定要請と同様に、すべての自治体に対して従来型の発注方式から脱却することを促す・その可能性を提示するといった面では大きな効果があったことは間違いない。
更に2021年のPPP/PFI推進アクションプランでは、策定要請の対象が10万人以上の自治体に拡大し、この策定期限が2023年度末と設定された。このことから2023年度末から2024年度当初にかけて、多くの自治体が優先的検討規程をホームページで公表することとなったが、国のモデルを何の工夫もなく劣化コピーしたリアリティのない画一的なものが全国各地で作られてしまったのである。
当初の内閣府の策定要請では、PFI法に基づくPFI(サービス購入型)を主眼に置き、通知文の別添資料として上記のような検討プロセスと「優先的検討規程策定の手引き」が添えられている。
この手引きでは、例えば対象事業を「総事業費10億円以上又は年間の維持管理費1億円以上」としていることから、一部で総事業費を5億円等に見直しているものもあるが、ほぼ全ての自治体の優先的検討規程は内閣府のモデルを踏襲している。
更にPSC(従来型手法の事業費)と比較してPFI事業による事業費はイニシャルで▲10%、ランニングも▲10%、事業収入は+10%として算出される。(また金利や資金調達費用などもPFI-LCCでは上乗せされることととなっている。)
このあたりのロジックの問題点は拙著「PPP/PFIに取り組むときに最初に読む本」「実践!PPP/PFIを成功させる本」にも記載しているが、基準となるPSCの算定に対してPFI事業ではどのような設計・工事になるのか、誰が運営事業者になるのかも分からない状態で算出しようがないはずである。更に言えば、PSC算定時の与条件がダメなものであったら、VFMが5%出たところでアウトプットとしてのプロジェクトはダメなものが5%マシになるに過ぎない(つまり、アウトプットも大したものにはなり得ない)。
何より、PPP/PFIの優先的検討規程といっておきながら、なぜかこの算定式は原則的に「PFI法に基づくPFIのうちBTO方式の(サービス購入型)」しか対応していないことが大きな問題である。
本来、PPPによるプロジェクトの醍醐味であり可能性は「オーダーメイド型」で行政と民間事業者がそれぞれのリソースを出し合い、試行錯誤しながら事業期間内に少しずつ「より良いプロジェクトにしていく」ことであり、このような短絡的な計算式でどうこう判断されるものではない。

===続きはリンク「まちみらい公式note」===
https://note.com/machimirai/n/nda20ad5b2770

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