■公平性=誰でもいい?
プロジェクトは「誰がやるか?」でグレードのかなりの部分が決まってくる。
旧来型行政では大半の場合、「どんな要求水準書を作るのか、事業手法はどうするのか、VFMは何%あればいいのか、地域の合意形成をどうするのか、議会の理解をどう得るのか」等の事務的視点・手続き論・事勿ればかり気にしていて「素敵なパートナーを探す」視点が抜け落ちてしまっている。
悪い場合にはこうした大事な部分を自分たちで考えずコンサルに丸投げしたり、既成事実を作るためにお花畑のなんちゃって市民ワークショップを開催したり、空中戦の有識者委員会を開催してそれらしい理屈を並べてしまう。
公平性・競争性・平等性・公正性といった行政で求められる原理原則は重要だし無視してはいけないが、これらを過剰に意識して「どうしたいのか?」すら欠落していては、自分たちで覚悟・決断・行動することを避けているようでは、プロジェクトの質が上がるわけがない。
また、これらの論理によって本来は民間事業者の知的財産によるクリエイティビティを形にしていくべき性能発注のプロポーザル等の「誰と選ぶか」のプロセスが、「コンサルに高いフィーを払って・先行事例の劣化コピーでしかない・分厚い・仕様発注」の全く面白味のない要求水準書に基づく形式的な世界に堕ちてしまう。
そのような旧来型行政の行動原理・思考回路に基づく「行政的事業」に素敵なパートナーが現れるわけがない。
「公平性=誰でもいい」ではないはずだ。

●ザ・サウンディングの実態
現在、行政のほぼ全てのプロジェクト(プロジェクトのレベルに達しない上記の「行政的事業」も含む)のプロセスではサウンディングが行われることが一般的になっている。
しかし、その実態は何をしたいのかもはっきりしないなかで、「行政のアリバイづくり」で自分たちの市場性のないシナリオを押し通し民間意見を反映する気もなければ、悪い場合にはコンサルに丸投げ委託する低質なものが相当数含まれているのが実態である。この事実は民間事業者が異口同音で口にする「サウンディング疲れ」なる言葉が物語っている。
また、民間事業者も悪い意味でザ・サウンディングにこなれていきていることから、何をしたいのかもはっきりせずに「老朽化しているから民間ノウハウを活用して建て替えたい」といった形でサウンディングをしてしまうと、大手ディベやゼネコンなどに「サービス購入型のPFI法に基づくPFI(BTO)じゃなきゃできません、大きく整備すれば賑わいも作れます」と唆される。(全社横並びで民間が過剰にリスクヘッジしたつまらない形しかサウンディングで話さないと、それがリアルではないがサウンディング結果としての「偽の市場性」となってしまい、客観的な立法事実となってしまう。)その結果、各地にヒューマンスケール/エリアスケールから逸脱した墓標が生まれていくのである。
木下斉さんもnoteでバッサリと「やっつけサウンディング」なる言葉で斬りまくっているが、本当にそのとおりである。
民間事業者は行政のアリバイづくりの道具ではない。そもそも民間の声を反映する気がなければサウンディングなどやってはいけないし、する資格もない。むしろザ・サウンディングによって泥沼にハマってしまう笑えない結果に陥る。

●ザ・プロポーザル?
前述のようにコンサルに丸投げ委託した仕様発注の要求水準書では、民間事業者は「分厚い要求水準書のパズルを解くこと」が仕事になってしまい、「いかに自分たちならでは知的財産を活用していくか」を考える必要がなくなってしまう。
逆にクリエイティビティを発揮しても、そのことは採点上全く評価されないし、実際に受注してそれを実施したとしても(行政からは)評価されない。最悪の場合には、クリエイティビティを発揮しようと頑張って企画提案したことが要求水準書から逸脱するとみなされ減点対象となり失注してしまう。求められていないのにクリエイティビティを発揮してもビジネスとしては良いことが全くない。
だから、このような仕様発注によるザ・プロポーザルでは民間事業者もマシンとして粛々とパズルを解くことに専念してしまい、そこに「人の匂い」が宿ることはない(Chat GPTで軽く遊んだだけでもそれらしい企画提案書があっという間に出来上がる)。

●ザ・提案制度(≒随意契約チラつかせ型)
随意契約保証型の民間提案制度は、2024年9月現在で延べ150以上の自治体で(質・規模や内容は様々であるが)何らかの形で実施されている。公務員時代にこの仕組みをはじめた頃は多方面からあらぬ批判(や一部は誹謗中傷に近いもの)を浴びていたことを考えると隔世の感があり、それ自体は素晴らしいことだと思う。
一方で未だに随意契約を保証しない民間提案制度を運用している自治体も数多い。「改めて公募の手続きを行う」「その際に民間から得た情報の全部または一部を利用して公募の仕様を作る」。。。書いていることの意味を本当に理解しているのだろうか。
どのような場合が知的財産に当たるのか行政は判断できるのだろうか。自分たちでできるなら自分たちで提案制度など活用せずにやれば良い。民間に少しでも頼ろうとするのであれば、知的財産はきちんと尊重して買わなければいけない。
中にはPPP/PFIの先進自治体を自称している自治体でもこのような民間の知的財産の意味を全く理解せず、自己都合の「ジャイアン理論」を振り翳している(それに影響された他の自治体が都合よく劣化コピーしていく)のだから闇が深い。

===続きはリンク「まちみらい公式note」===
https://note.com/machimirai/n/n64e730548f08

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