●概要
アドバイザー業務で訪れていた宮崎市。全国各地を旅しているので、こういうことも可能性としてはありうるが、まさかの事態であった。これまでも東日本大震災は流山市、その4月11日に発生した余震は相馬市で体験しているが、やはり日本は豊かな自然環境と引き換えに自然災害の高いリスクを負っていることを感じた。
地震発生直後に会議は中止し、その場にいた職員はあっという間に会場の片付け・職場に戻る対応をできたのはさすがであった。しかし、その後に「自分が何をするのか」を把握・システマティックに動ける職員は(少なくともその場には)ほとんどいなかった。
津波も含めてそれほど大きな被害がなかったことは不幸中の幸いであったが、この経験から学ぶことは多くあるだろう。
■初動対応
●本部と避難所
当日の会議は宮崎市役所に隣接する市民プラザで行われており、職員は本部となる本庁舎にすぐに移動することができたが、ここで気をつけなければいけないのが「市民が市役所に殺到すること」である。
過去の経験では、応急危険度判定で訪れた新潟中越地震の際の小千谷市において市民やマスコミが庁舎に殺到し、また支援物資も庁舎に集まる状態となっていたため、本部が果たすべき指揮命令系統、市民の生命・財産を一時的に守るための避難所、情報を正しく広く発信するための広報機能、避難物資等の物流拠点などの機能が混在してしまった。結果的にそれぞれの役割が十分に機能することなく、難しい状態に陥ってしまっていたようだった。
宮崎市はホームページで避難所情報が閲覧できるようになっている。ここでもよく見れば市役所の会議室棟は避難所だが本庁舎や市民プラザは避難所に位置付けれられていないことがわかる。
市民が市役所に殺到するのは「情報が正しく伝わっていない」「災害時の行動が共有されていない」からであり、市役所に行けばなんとかなるという市民のピュアな発想に基づくものである。東日本大震災の際の相馬市でもそうだったが、大規模災害の発生初期の庁舎(本部)はただでさえ混乱していて、死傷者などナイーブな個人情報も飛び交っている。
宮崎市でもせっかく庁舎と市民プラザが隣接しているので、最初にやるべきことは「庁舎には市民を入れない」ことを徹底すべきである(今回は幸いにもそのような事態は発生しなかった)。
また、新潟中越地震では市役所の駐車場をマスコミが長期間にわたって占拠し、災害対応で必要な人々が庁舎にアクセスすることが困難になる状況も発生していた。マスコミが避難所等に入り込み、被災者に「辛かったですね」など被災された方々の立場・感情を無視したつまらない報道がされることがいまだに一般化しているが、市民生活を本当に守りたいのだったら、こうした部分も含めて行政は発災直後から十分なメディアコントロールも本部で行うことが求められる。
本部機能は被災状況の把握、避難所の開設や運営、関係機関との連携など多種多様で膨大な業務を同時並行で効率的・迅速にこなさなければならない。市民対応とは明確に分離することが非常に重要である(近年、「市民が気軽に来れる庁舎」などと謳っている庁舎の場合は、少なくとも駐車場・敷地内・庁舎内で明確なゾーニングをしておかないと、自らカオスに陥ってしまう)。
●BCP
公務員時代から地震を中心とした様々な自然災害に直面してきたが、毎回共通するのはBCPが全く機能しないことである。今回も、地震発生直後に「BCPで定められたことをまずはしてください」とお願いしたが、残念ながら全くBCPが共有されてはいなかった。
BCPで重要なのは「いかに被害を小さくするのか」「いかに早く日常に戻すのか」の2点であるが、ほとんどの自治体のBCPはコンサルへの丸投げ業務委託で策定したもので、意味のないグラフや他自治体の過去の事例などが散りばめられ無駄に厚く(どこを見ればいいかわからない)、いろんなまちで使えるように金太郎飴的な一般論しか書いていないので全く役に立たない。
全自治体で策定されていても「実際の現場で使えなければ全く意味がない」。(これは公共施設等総合管理計画、PPP/PFIの優先的検討規程等も含めてほぼ全ての行政計画に当てはまる。計画を作ったらやった気になる、ただそもそも庁内にすら共有できない計画は何の意味も持たないし、「計画行政」たる言葉ももはや機能する時代ではない。)
===続きはリンク「まちみらい公式note」===
https://note.com/machimirai/n/n0407fc1be931
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